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私的グァテマラ、ベリーズ、メキシコ旅行記
彼は今回ニューヨークへ友人と会いに行く途中で飛行機に乗るのは生まれて初めてだという。離陸の際彼は顔面蒼白になり冷や汗をたっぷりかいていた。顔に『恐怖』と言う文字が浮かび上がっていた。離陸後、地面がどんどん離れていく光景が本当に信じられないとでも言いたげな表情をこちらに投げかけてきた。

私は自分が初めて飛行機に乗ったときの事を思い出した。あの時は確かパキスタン航空で、乗っただけでも少し不安になるような航空会社だったが、これから自分の知らない世界に向かう期待感と不安感、そして初めて乗る飛行機への恐怖感が複雑に入り組んで今の彼とおそらく同じ心境だったのが脳裏に浮かんで何だかおかしかった。

ダラスが近づいてから彼は不意に聞いてきた。
アメリカに入国するときに花束を持っているんだけど大丈夫だろうかという内容だった。

私は花束?と思ったが一応アメリカは生ものだとか植物、動物などにはとてもうるさくて持ち込めないかもしれないよとアドバイスした。でも何で花束なの?と聞いたらニューヨークで会う友達に渡すんだとある思いを込めながら彼は答えた。

それで私はすべてを理解した。難しいかもしれないけれど何とか頑張りなと彼にエールを送った。彼にとってメキシコシティからニューヨークへの旅は世界を100カ国まわろうが、地球を一周しようがそんなものと比べられたくないぐらい意味のある、自分との出会いの旅だったのだろう。

飛行機は予定通りにダラス空港に到着した。それは同時に彼との別れの時を意味していた。私はトランジットルームに彼はイミグレーションへ向かった。

彼は私に向かい、あなたに会えて本当に良かったですと言うと同時に右手を差し出してきた。私は、私こそあなたに会えて旅の終わりにとてもいい思い出が出来ました、ありがとうと答えた。

イミグレーションに向かう彼の背中を見ながら住所も電話番号もお互い聞かなかったのでおそらくもう二度と会うことはないであろうメキシコの友人にとにかくご幸運を、と心の中でつぶやいていた。

東京行きの飛行機の中で、メキシコかあ、また行くのも悪くないな、と機内食を詰め込みながら考えている自分に気がついた。

(.最後まで読んでいただいた方に本当に感謝いたします。ありがとうございました。)

BY Akihiko ICHIDA

 


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